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福祉作文コンクール

当財団では、神奈川県社会福祉協議会と神奈川県共同募金会が主催する、小・中学生を対象とした「神奈川県福祉作文コンクール」を後援しています。
この作文コンクールは、次世代を担う子供達が助け合いや思いやりの心を育み、誰もがお互いを支え合う 「ともに生きる福祉社会」が実現するように願い、毎年行われているものです。
地区審査から県1次審査を経て、県最終審査で選考された最優秀賞16編(小・中学校各8編)の内それぞれ1編を当財団理事長賞として『日揮社会福祉財団ふれあい賞』の名称で表彰しています。
2023年度(第46回)の表彰者と作文を紹介致します。
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『日揮社会福祉財団ふれあい賞』
小学生の部   「僕の弟、あゆちゃん」
   海老名市立社家小学校   四年   林   蒼翔 さん
中学生の部   「きょうだい児」
   神奈川県立平塚中等教育学校   二年   工藤   美岬 さん

小学生

小学生の部
「僕の弟、あゆちゃん」
海老名市立社家小学校
   四年   林   蒼翔

   僕の弟はしゃべるのが下手で、二年生なのに数もひらがなもわからない。やっと僕の名前が言えるようになったが、言いたいことはなかなか言えない。僕の言うことも伝わらないことが多く、急に怒って「お兄ちゃんごめんなさいする」と言い始める。何で怒っているのか、あやまりたいのか、それもわからないから面倒でたまらない。だけど無視すると、お母さんに僕がしかられるから、それもまた面倒で僕があやまる。なんでいつも「僕が」って思うことがたくさんある。僕だって勉強をやらずにすべり台で遊んでいたいし、簡単な宿題をしてほめられたい。僕はバスケに水泳、ダンスといっぱい習い事をしてがんばっているのにほめられない。「あゆちゃんだけずるい」と思っていた。
   でも僕は気づいた。弟はしゃべるのも伝えるのも下手だから、ただ言えないだけで僕と同じように「お兄ちゃんずるい」と思っているのかもしれない。バスケのルールがりかいできれば、楽しいからやるかもしれない。ダンスをかっこよく踊ればモテると思いやるかもしれない。僕は僕の考えで弟のことを決めつけていた。
   これからは弟が何を思い、伝えたいのかを観察することにする。弟の好きなことや、得意なことがわかるお兄ちゃんになりたい。そして弟のことをりかいしてもらえる居場所をつくりたい。僕の友達は弟がいてもバカにしたり、いやなことを言う人はいない。急に怒ってさけんでも、誰もうるさいとか変だと言わずに遊んでくれる。そのままの弟を受け入れてくれる。「あゆちゃん」とたくさんの時間を一緒にすごすことで、どこにでもいる自然であたり前の姿になっている。これから先、あたり前の存在で続くように僕は弟と付き合っていこうと思う。

中学生

中学生の部
「きょうだい児」
神奈川県立平塚中等教育学校
   二年   工藤   美岬

   あなたは「きょうだい児」という言葉を知っているだろうか。きょうだい児とは、重い病気や障害を抱えている兄弟姉妹がいる子どものことである。そして私もきょうだい児である。私の兄は重度の自閉症と知的障害を持っている。
   きょうだい児だからといって特別なにかあるわけでもない。ただ普通に兄弟姉妹が居るだけだ。しかし、その兄弟姉妹が病気や障害があるだけで特別視されてしまう。そうなると世間の目が鋭くなる。私が兄のことを説明すると、かわいそうとか聞いてはいけないものを聞いてしまったような顔をする。
   意味不明な発言や、見た目に合わない幼稚な行動をする兄に不信感を持つのは無理もない。しかし、そんな兄を見て傷付くような言葉を私にかけられたことがある。小学校低学年の頃、兄と同じスイミングスクールに通っていた同級生の男子に、
   「お前の兄ちゃん、いつも変な事をしゃべってて気持ち悪い。」
とからかいながら言われたことがある。私はその言葉に心を抉られた。当時は小学校低学年だったのもあって、おそらく言った本人たちは兄が障害を持っていることは知らなかったと思う。しかし、私はこの言葉をかなり引きずっている。今でも兄と一緒にいるところを人に見られるとこの言葉を思い出してしまう。
   他にはこんな経験がある。友達と話していると、自分の兄弟や姉妹の話になった。みんなが兄弟の年齢とか話していると、もちろん私の兄の年齢も聞かれる。兄は二十歳であり、本来は大学や就職をしている年齢である。二十歳であることを説明すると大体、
「どこの大学通ってるの。」
と聞かれる。そして、
「大学は行ってないで、就職しているよ。」
と答える。そう答えると友達は
「あっ働いているんだ。」
と少し驚くような顔をする。この会話だけだと兄は高卒で働いていると思われる。そのため後に、
「障害を持っていて大学には行けないから、障害を持っている人でも働けるところで働いているよ。」
と補足する。そうすると聞いてはいけないような顔をされ、気まずい空間になる。そういう顔をされるのはしょうがないことだとは分かっている。分かってはいるが悲しい気持ちになる。障害持ちの兄は友達にとっては異様かもしれないが、私にとっては普通のことなのである。だからこそ、あのような顔をされると孤独感や周りとは違う異質感を感じてしまう。
   私はきょうだい児を特殊なのではなく、普通ととらえてほしいと思っている。それと同時にもっと障害に理解がある世の中になってほしいと思う。障害にも、身体の欠損など目に見える障害と脳や心に障害がある目に見えない障害がある。目に見えない障害は、障害者か健常者かわからない時があるが、なるべく思いやりを持ってほしい。また、きょうだい児には普通に接してほしい。周りと同じ兄弟姉妹がいるだけだから。

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